『 In my Fire Wallー心の鎧ー』

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 「さあ、どうだか」紅霧はどうでもよいことのように言って、ステージに目を向けた。「だけどさ、あれを見てごらん」  2階の音響設備のあるガラス張りの部屋の中にいる、浅葱先生の影を指さす。  「ほら、もう大分濁っちまったからね。このまんま、鏡の中で寝かせておやりよ。元に戻ったって、ツケを払うのは本体なんだから」  『私はそれでもいいのですが、やはり……』ステージを見る。『納得していただけないでしょうね……』  鏡の中の浅葱先生は眠り続けている。  (どうしたものか……?)私は腕を組んで考えた。(無理に引きずりだしても、浅葱先生を説得できそうな人物はステージの上だ)  そしてその人物はスティックを振り回すのに精一杯で、こちらを見る余裕もない。対照的に主人といつかは、互いの音に音をのせ、空中にある五線譜で出来た階段を駆け上がっていくかのようだ。
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