『 In my Fire Wallー心の鎧ー』

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 モンスターママがスマートフォンに手を伸ばすと、浅葱先生は取られないように、さっと頭上に手を上げた。  空振りした手を持て余したモンスターママは、眉をよせて口を開こうとした。しかし声を発する前に浅葱先生が言った。  「オリジナルですね」  「えっ……?」  モンスターママが首を傾げる。  「この写真は加工した画像の、オリジナルです。加工する前の画像は、校内にも掲示されているこちらの……」と自分のスマートフォンを器用に片手で操作し、画像を示す。  「ポスターです。ロゴマークも鴉ではなくて、王冠です。そしてバンド名もDeath Clownになっていますし、コピーバンドだと説明文も書いてありますよね」  「でも! SNSに載っていた画像は!」  「ですから、加工されたものです。ほら、拡大した加工後の画像を見てください。  角がギザギザしていますね。切り抜いて、張りつけたものです。それから照明がシルエットになるようにあてられているのに、ロゴの部分にかかっている影が逆向きに出ています」  浅葱先生はひとつ息を吸い込み、スマートフォンの画面を指でカツッ、と叩いた。  「そしてこのスマートフォンのフェイク画像はSNSの中の物ではなく……、画像加工アプリに保存されていますね」  「そ、それは……」  モンスターママの眼球は抜け道を探すように落ち着きなく動き回る。  「被害者のあの子たちには、なんの責任もないですよ。それとも……、犯人を公表しますか?」  浅葱先生は「はんにん」にアクセントを付けてゆっくりと言った。  「い、いえ、もういいです。帰ります。スマホを返してください」  「もう少しお待ちを。SNSのアカウントを確認しますから」  アカウントを調べられたら、最初に加工画像を流したのも自分だとわかってしまうと思ったのだろう。
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