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『その蜘蛛の名は、マミちゃん』
「八つの目がある……。へえ、そうなんだ? それで世界はどんな風に見えてるの? ふふっ」
主人は教室の机の上に右肘を付き顎を乗せ、左手の親指でスマートフォンを繰りながら、呟いた。小さな蜘蛛が主人を見上げている。見つめあう一人と一匹……。
「アイラちゃん……?」
違うクラスからわざわざ主人に会いに来たいつかが、机から二歩離れた位置から声をかけた。が、聞こえないようだ。
「アイラちゃん……」「アイラちゃん」「アイラちゃんってばぁ!」
叫ぶように呼ばれると、ようやく気が付き「あら。もっと近くに寄ったら? 話しにくいじゃない」と、めずらしく機嫌よく手招きする。
「ほら、ほら」
「あー、うん」
いつかは自分で主人に声をかけた割には、いかにも仕方なさそうに、半歩近づく。
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