『その蜘蛛の名は、マミちゃん』   

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 「どうしたのかな?」  「ブラックフラーミィ、一来がおかしいのはいつからなの?」  『そうですね。ここ一週間といったところでしょうか』  「えっ、一週間も一来君の様子が変な事に気が付かなかったのっ?!」  いつかの声に非難が混じる。  「し、仕方ないじゃない。私はこのところ、マミちゃんのことで忙しかったし……。それにフラーミィが教えてくれなかったんだもん」と主人は私を指さした。  「アイラが聞かなかったからお話しなかっただけです。あんなにも分かりやすく様子がおかしいのに、よもや気が付かないとは思いませんでしたので」  と、押し付けられた責任を丁重にお返しする。主人が私をキッと睨んできたが、影の姿なのをいいことに知らん顔を貫き、『そうですね。さらに言わせていただくならば、一来の様子はだんだんひどくなってきているようですね』と言い添える。  「だんだんひどく……?」  その時、ガタガタと教室のドアが開く音がして、社会科係が資料を両腕に抱えて入ってきた。手を使えないため、肩で引き戸をあけたようだが、一来はそれに気が付く事もなく、ぼんやりと頬杖を付いたままだ。  いつもなら一来は影より素早く社会科係の隣に出現し、さりげなく資料を半分分け持って教壇まで運んであげているはずだ。   主人といつかはお互いの顔に浮かんだハテナマークを、じっと見つめあった。
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