『秘密はしおり糸を辿って』

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 いつかが仕方なさそうに頷くと、主人はようやく糸を辿る作業に戻った。  しおり糸がたるんで、途切れている場所までやってくると、二人は辺りを見回した。住宅の列がいつの間にか藪のような花や木の植え込みに代わっている。植え込みの先には、腰ほどの高さの低い門があり、ふじみ公園と銅製のプレートが取り付けられている。もともとはピンク色だったはずの看板は、すっかり青緑色の緑青(ろくしょう)に覆われている。古くからある公園なのだろう。  「あっ、いた……」 いつかが物陰に体を潜め、主人の腕も引っ張る。  「公園に走って行くよ!」  「なんで私が隠れないといけないのよ」  主人は不満そうにしながらも、隠れた物陰から顔を覗かせた。
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