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「……?!」
主人は声にならない悲鳴をあげ零れ落ちそうなほど目を見開くと、振り返っていつかにも見てみるように無言で促す。
いつかもそっと顔を出し、同じように息を飲むとすぐに顔を引っ込めた。二人は顔を見合わせて、もう一度今度は一緒に顔を出して確かめる。
視線の先には一緒に池の橋の欄干に身を乗り出している一来と紅霧の姿があった。
二人の手の先には小学校低学年の男の子のお尻がある。公園の池に落ちそうになったところを助けたのだろう。男の子が橋の手前に引っ張り上げられる。二言三言交わし、助けられた男の子が駆けていく。
紅霧が手を下から上にさっと振り上げると、池にさざ波が立ち、池に浮かんでいたボールが岸に流れ着いた。橋から回り込んだ男の子がボールを拾い上げると、嬉しそうにボールを持ち上げて受け取ったと合図すると走り去った。
主人の呼吸が早くなり、服の上からでもはっきり分かるほど胸が上下する。
「待って……! アイラちゃん!」
いつかが呼び止める声も聞こえない様子で、主人が飛び出した。
「何をコソコソやっているのよ!」
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