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紅霧を捕まえようと伸ばした主人の腕は、影になって近くの木に這い上った紅霧にするりとかわされた。人型になって木に腰かけた紅霧の銀色の髪が木漏れ日に輝く。黒に近い紺色のワンピースには喉元まで詰まった白い襟が付いている。スカートが風をはらみ、ふわりと膨らんだ。重なり合う濃い緑の葉が日陰を作り、やけに涼しげだ。
スカートの中からのぞく白いストッキングを履いた足を組むと、紅い瞳を見開いて三人を見下ろした。愉快な大道芸でも見ているような顔だ。
「どういうこと?」
手を腰に当てて仁王立ちになった主人が、ドンっと右足を踏みならし地面を揺るがせる。歩いて汗ばんだ顔が怒りで余計に赤くなる。
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