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「おお、怖っ。アイラと戦う気はないよ。黒炎……じゃなかったね。フラーミィ、とも。……今はまだ、ね」と、私の名をわざわざ言い換える。
からかわれて、イラつきをみせる程のサービス精神は持ち合わせていないので、あえて無表情を決め込むと、今度はそれを「無理しちゃって」と笑う。
思わず舌打ちすると、紅霧は満足げに「それじゃあね。また会いましょう」とウィンクした。ひらりとスカートがひるがえり、木の影の中に消えた。
紅霧は主人の祖母の若い頃の姿をしているだけに、意地悪そうではなくただ楽しそうな顔をしていると、敵ながら魅力的だと認めざるを得ない。紅霧の残像を一来が目で追いかけてしまうのも無理はない……のかもしれない。
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