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「どういうこと?」
主人が腰に手を当てたまま、一来に詰め寄った。一来は両手をあげ降参のポーズをしながら後ずさりする。砂ぼこりが舞い上がり、あっという間に一来の革靴が白く汚れる。
『アイラ、落ち着いてください。一来の話を聞きましょう』
すばやく一来と主人の間に影のまま体を滑り込ませ、二人に挟まれたわずかな空間で無理やり人型になると、二人の体にぶつかった。
「うわっ。フラーミィ、近いよ!」
一来が驚いて体を引く間際、首に顔を近づけて息を吸い込み香りをチェックする。いつもと同じでうっすらとマナの香りがするだけだった。
(ふむ。どうやらまだ紅霧に血を取られてはいないらしい)
先日のライブのポスターで、一来の血に含まれるマナの量が特別多いということが紅霧にばれてしまった。だから狙われたのだと思ったのだが、血の匂いがしないということは、違ったのだろうか?
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