『秘密はしおり糸を辿って』

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「怒らないから、どういうことなのか説明して」  一来は大きく深呼吸すると、観念したように話し出した。  後夜祭から数日がたった頃から、一来の登下校時に紅霧が付いて来るようになったのだという。最初は一来の影に隠れてついてくるだけのようだったが、ある時駐輪場で、ハンドルが絡まって自転車を引き出せずに困っている老人を一来が手伝おうとしたら、紅霧が手助けしてくれたのだという。そしてその後も、一来が人助けをしていると、いつの間にか紅霧が現れて、何かと手伝ってくれるようになった。  主人やいつか、私に早く言わなければ、と思いながら、紅霧の真意がわからず言いそびれているうちに、どんどん言いづらくなってしまい悩んでいたのだという。  そして先程は子供が池にかけられた太鼓橋から乗り出して落ちそうになっている所を、紅霧が影の姿で滑っていき、一来よりも先に捕まえてくれたという。  「僕だけだったら、あの子、池に落ちていたよ」隠しきれない称賛の響きがちらりとのぞく。  「うーん、それなら仕方ないし、いいことなんじゃない?」と、いつかも同調する。
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