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「またなにか企んでいるに決まってるじゃない!」
主人がもどかしげに言う。一来といつかを説得できる材料がないので、かえって語気が強まってしまうのだろう。
「決めつけるなよ。誰でも、そうだよ、影だって、変われるはずだろ。少なくとも紅霧が今日やったことは、何かの企みだと批判するよりも、良い事をしたって認めたっていいだろ!」
「一来のバカ! もういい!」主人は手に持ったコーラを激しく振ると、一来の手に押し付けた。「キャップ、緩んでいるから」
「えっ?」
一来が思わずキャップに触れたとたん、白く泡立つコーラが勢いよく溢れだし、手と制服を濡らした。
「うわっ!」
慌てふためいている一来といつかを後に残して、主人は公園を立ち去った。
一来は濡れた手を振りながら、遠ざかる主人の後ろ姿を見つめていた。まだ何か言いたそうな顔で。
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