『フラーミィは一来に見つかった』

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 主人は寝ころがったまま、制服の胸の内ポケットから小さな銀色の(はさみ)を取り出した。指を入れる輪の部分には鏡と同じ模様が浮き彫りにされている。  「よいしょっと」  重くはないだろうに、掛け声をかけ、ツインテールの片方から毛先をつまむ。3本の髪がまとめてシャキッ、という小気味よい音と共に切られた瞬間を狙ってかすめとる。主人にしてみれば、指の上を影が一瞬よぎったと思ったら、手に持っていた髪の毛の切れ端が消え去っていたようなものだろう。  「フラーミィ、お行儀が悪いわよ」  『アイラ、切ったそばから精命(マナ)が流れていってしまうのです。鮮度が命なのですよ』  「Wishartはwith heart、共にあれ、そして助けよ……」  主人は私の講釈は聞かず、手の甲で目をおおってつぶやいた。Aila Wishart。Wishartは主人のファミリーネームだ。共にあれ、そして助けよ。  その言葉の響きは、今日見かけた一来という青年を思いださせた。おそらく主人にとっても同じだったのだろう。  (ふむ。逆に主人には全く似つかわしくない言葉でもあるな……)私は主人の足からするりと伸びあがり、私自身の姿で……主人の顔を覗き込んだ。
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