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『美味しい! ぷにぷにしているんだね』
誰にも取られないように両手でしっかりとタピオカミルクティーの容器を挟んで持ち、もう一度ストローに口を付ける。
「気に入ったんだね。じゃあ全部あげるよ。それなら私はもう一つ、別のを買ってこようかな……」
いつかがベンチから腰を浮かす。
「買いに行かなくていいわよ。ほら、すごい行列じゃないの」
いつかのデート発言で不機嫌をフツフツと募らせていた主人が、投げやりにキッチンカーを指さす。
タピオカドリンクを売っている移動販売車は、水色とクリーム色のツートンカラーの車体に、赤と白のオーニングが可愛い。車の前にもカラフルなタピオカのメニュー看板がおかれ、制服の女子高生達が群がっている。
二十分ほど前に主人達がタピオカドリンクを買った時には、さほど混んでいなかったのだが、午後4時半を回ったころから、あっという間に行列が伸びた。つい先週オープンしたばかりのタビオカ専門のキッチンカーだから、というだけではなく、ポップな色合いのタピオカドリンクは学校帰りに飲みながらおしゃべりするのにぴったりなのだろう。
「フラーミィ、いつかをからかうのは終わりにして早く続きを話して」
主人はいつかに「ヨーグルトとぷちっとレモン」味のタピオカドリンクを押しつけるように手渡した。炭酸の細かい泡がシュワッとはじける。
「あ、ありがと……」
いつかはドリンクを受け取りながら、「私、からかわられていたのか……いや、でもちびアイラはやっぱり可愛いし……」とブツブツ独り言を言っている。
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