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いつかの混乱ぶりにはまったく構わず、「マミちゃんに危険な事はさせてないわよね?」 と、主人が顔を覗き込んでくる。
なかなか鋭い。紅霧が関わっているとすれば、危険がないとは言いきれない。しかし……。
『見張らせているだけだから、大丈夫だよ』
幼少期の少女特有の高い声で嘘をつく。
「それで、どこに寄ってるの?」
『ここ。塩山中学校近くの中央公園だよ』
「ここ? ただの公園じゃない。通学路というだけなんじゃないの?」
「違うよ、アイラちゃん。中央公園は、一来君の家と方角が合わないもん」
と、なんとか立ち直ったらしいいつかが口を挟む。
「……あっ、そう。それじゃあ、一来は公園で何をしていたのよ」
私は口の中に残っていたタピオカをすばやくかみ砕き、飲み込んだ。くぐもった声で話して、聞き返されたい内容ではないからだ。
『……紅霧の鏡に血を落としていたんだって』
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