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主人は私の手からタピオカミルクティーの容器を奪うと、ストローに口を付けた。青い瞳には霞がかかり何も見えていないようなのに、口に咥えたストローの中を次々にタピオカが吸い上げられていく。
私はため息をついた。味わわないのなら返して欲しい。
仕方がないので、目も口も開けたまま固まっているいつかの手から、タピオカドリンクの容器をそっと横取りする。チュッと吸うと、柔らかなレモン風味のタピオカが口の中で崩れた。
『おいしい』
美味しい、といえば一来の精命だが……。
「それならどうして一来くんは、影と入れ替わらないの?」
先に気を取り直したのは、いつかだった。主人は眠りから引きずり出されたばかりのように、二、三回目をしばたいた。
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