262人が本棚に入れています
本棚に追加
「まっ、まあまあまあ。ケンカしている場合じゃないでしょ? 今は一来くんの事を考えないと」
いつかが手のひらを下に向けて何度も上下させた。
「そうだったわ」
『そのとおりだね! いつか』
浮き上がっていた紙ナプキンがひらりとベンチに舞い降りた。
主人が猫のようなつり目をさらに吊り上げて、「ちょっと、マネしないでよ」と睨んできたが、ツン、とそっぽを向く。
あわてていつかが咳払いをひとつすると、「それでマミちゃんは他にはなんて言ってたの?」と、割って入ってきた。
『一来は自分で、鋭いもので指を切っていたって』
「一来くん、やっぱり紅霧に騙されているんだよ、きっと!」
最初のコメントを投稿しよう!