『血の色は、何色?』

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 いつかが容器を手で止め、ベンチに立て直しながら、「だって、あの時はさ……、ゴスメどころか、バンドやってくれる子もいなくて。Death Crowが唯一の拠り所だったっていうか……」と小さく言った。 「今は、……」  (アイラと一来がいるから)  続くはずの言葉は、口にする方も聞く方も照れ臭いのだろう。いつかは口をつぐんだが、主人には届いたようだ。主人は頬を赤く染めて、跳ねる心臓を抑え込むように腕を組んだ。  『よかったじゃない、アイラ』 からかうように言うと、いつかが「フラーミィもだよ!」と腕を掴んで振ってきた。  『えっ、私も……?』  ふいに、かつて浅葱先生の視線から私を隠そうとかばってくれた時のいつかの背中を思いだした。  「ああーら、よかったじゃない。フラーミィ」  暖かくなった胸に主人が水をさす。しかしこれは好都合。気を取り直して反撃する。  『ええ、もちろんです。私のような影には人と出会う機会はとても限られておりますから、可愛らしいお友達ができてとっても嬉しい!』  「フラーミィとちびアイラの言葉と声が混じっているわよ!」  主人は勝ち誇ったように胸を反らすが、自分の声も音符がついているように語尾が跳ね上がり、口元が緩んでいるのはごまかせない。  (この勝負は引き分け……、いえ、いつかの一本勝ち、かもしれませんね)
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