『血の色は、何色?』

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 『影を使うことによって、使用された精命は普通は白い霞のようなものになります。しかしいわゆる悪い事に使われれば黒い霞となるのです。白と黒いずれの場合でも、この霞が霧が立ち込めるように鏡に溜まっていくのです。鏡と繋がっていない私のような影の場合は風と共に霧散してしまいますが』  「つまり……?」  『おそらく鏡には精命の量が少ない誰かがいて、一来はその誰かのために、精命を提供しているのでしょう』  「でもそれなら誰かの影に直接血をあげればいいんじゃない?」  『一来の血の精命が多いといっても、影を動かそうとすれば継続的に血を影に与えなければなりません。ですから一旦、鏡の中の人物に精命を提供し、依り代を通して影に精命を与えているのでしょう。人間は精命の貯蔵庫のようなものですね』 「それでもいっぺんに血を大量にあげるわけにいかないから、一来君は定期的に血を提供してるのか……」 『そういうことでしょうね。まあ、鏡の中の人物の精命が少ない……と言っても、それは通常の範囲でしょう。  いつかも浅葱先生も精命の量は多い方でした。それでも鏡の中では意識を保てなかったのですから、精命の量が普通の方が鏡に入り影と入れ替わったら、おそらく遠からず命の危険が生じるでしょう』  「えーっ! 私って死んじゃうところだったの?!」  いつかが悲鳴に似た声をあげる。  『いつかも浅葱先生も精命が多いですから、眠ってしまう程度で帰って来られてよかったですね』
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