キラルの扉

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 『危険すぎます。キラルの住人はエナンチオマーです。ヒューマンとは全く別の生き物なのです。予測がつきません。特にいつか、あなたは奏多さんとなんの関わりもないでしょう』  「関わりなら、あるよ! さっき中学校で奏多の味方をした。手を出したんだから、最後までやる」  口調に決意がにじむ。  「いつか、あなた鏡の世界から戻って来られなくて、Black Crowが逆再生でしか聴けなくなってもいいの?」  主人の質問は許可と同義だ。  「それは嫌。だからちゃんと戻ってくる」  いつかが真顔で答えた。やはり真顔の主人と見つめ合い……笑い出した。  紅霧が紅茶を飲み干すと立ち上がった。    「きまりだね。鏡を元に戻してもらわないといけないから、私も行くよ。一時休戦といこうじゃないか。でも奏多を連れ戻したら、鏡は返してもらうからね」  『契約成立、ですね。では行きましょうか?』
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