キラルの扉

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 紅霧が鏡を見上げて、主人達に降りてこいと合図する後ろ姿は、頼れる姉御といった感じだ。手際よく手助けして一人ずつ下に降ろしているのを眺めていると、クスクス笑いが口元に浮かんで来た。  (優先順位? 鏡が大事ならば、キラルの扉が閉まるのをただ黙って見ていればそれでいいではないか。  一人は扉の前に残して安全を確保し、扉の中に入る人間は三人の影がそれぞれ一人ずつ守る。  優先順位という響きのよくない言葉をわざわざ持ち出したのは、誰が誰を守るのか、いわば担当を明確にしたかったからだろう。  分かりましたよ、紅霧。私の“担当”のアイラはお任せください。  そしてあなたの本当の目的は分かりませんが、しばし私の胸の内に留めておくことに致しましょう……。あなたがあなたのやり方で人間を愛しているということは……)  「フラーミィッ、何をボーッとしているんだい。時間がないんだ。早くこの子達に計画を説明しておくれ!」  紅霧の叱責(しっせき)が飛んできた。  『承知いたしました』  素早く笑みを消して答えると、私は皆の元へ歩み寄った。
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