『キラルの世界』

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 『いつか、一番大事な約束をして欲しいのです。もし扉が閉まりそうになったり、不測の事態になったりしたときには、私達に連絡したら返事がなくてもすぐに一人で先に鏡から出てください。私達がギリギリで扉から出てきた時に鏡の出口が順番待ち、ということにはしたくないのです』  「皆を置いて自分だけ、リアル世界に戻るなんて……」  『時間に余裕がないかもしれません。キラルの扉が閉まると、扉の向こう側はブラックホールに飲み込まれます。扉の外側のこの部屋がどうなるのかわからないのです。ただ元のようにリアル世界を映す鏡に戻るだけならいいのですが、なにか予想が付かないことが起きるかもしれません。ですから……』  「うん、わかった。自分の気持ちよりもやるべきことをやる方が、皆の助けになるよね」  「いつかちゃん。扉がいつ閉まるか気にしていたら、安心して奏多を探しに行けない。だから……、ありがとう」  「一来くん。私は大丈夫だよ。扉を見張って、皆が帰れるように出口までの足場、作っておくからね。扉が閉まりそうになったら、ちゃんと一人で脱出しておくって約束する。だから私の事は心配しないで、行って来て!」  いつかは唇を横に引き締め、一来の視線をしっかりと受け止める。
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