『キラルの世界』

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 黒い鞄を肩から斜めにかけ、跳ねるように歩く姿は快活そのものだ。  「えっ、あの人?!」  一来が小声で奏多に確認する。  「うん。でも別の人みたいに見えるな」  「一来、知っているの? 誰なの、あれ」  『アイラ、あれ、というのは失礼ですよ』  「あの人は三年の佐々(ささ)冬矢(とうや)先輩だよ」  一来が小声で皆に教える。やはり一来は役に立つ。  「佐々? 変わった苗字だけど、どこかで聞いたような?」  主人が首を傾げる。  ーーアイラちゃん! 佐々って、モンスターママと同じ苗字じゃないーー  「ってことは、つまり」  『ええ。あの方の息子さんということでしょうね』
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