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「フラーミィ、エナンチオマーの冬矢がリアル世界に出てしまったらどうなるの?」
走るスピードを上げて私の隣に並んだ主人が聞いた。
「おそらくはリアルな冬矢と入れ替わろうとするでしょう。なぜならリアルとエナンチオマーは長い時間同じ世界には存在できないからです。リアルとキラルは鏡を隔てた対の世界なのですから。釣り合いを取るためには、片方しか存在できないのです」
「そうなのか? 知らなかった。どうしよう……」
後ろを走っていた奏多も聞いていたのだろう。声が震えている。
「それで、その他にはなにか影響あるの?」
「桐子が殺されるかもしれませんね」
「なんでそういうことになるの? おばあちゃんは白の鏡の中にいるのよ! 関係ないじゃない……」
『入れ替わりには、白の鏡と黒の鏡が必要なのですよ。白の鏡の中の桐子は邪魔なのです』
主人は返事をせずに、走るスピードをあげた。肯定することすら恐ろしい仮定の話だったのだろう。
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