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しかしそうはいっても、鏡の冬矢を含め、エナンチオマーたちはだれもキラルの扉の場所を正確に知らないのだ。ただエナンチオマーに気が付かれずに、扉を抜けてリアル世界に戻ればいい。
残る問題は時間だ。私と紅霧そしてピュリュの三人が影にもどれないとするなら、通り抜ける人数は六人。全員が通り抜けるためには四十二センチが必要なのだ。それまでに戻ることが出来るだろうか?
奏多の家がある通りに入ったところで、一来と紅霧が立ち止まっていた。
『エナンチオマーはどこですか?』
「ごめん、見失った……」
「いないならそれでいいのよ。さあ、早くキラルの扉に戻るわよ!」
紅霧がちょっとお待ち、というのと、先頭を歩き出した主人が足を止めるのは同時だった。
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