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「ねえねえ、一来君。 中学校……ってどこの学校かなぁ?」
いつかは歩いてきた一来を手招きしながらたずねた。
「さあ……?」
「マミちゃん、知ってる?」
主人の机の上にいた小さな蜘蛛が、クルクルとした瞳でいつかを見上げた。
「いくらマミちゃんでも、知らないかー」
期待して聞いたわけではなかったのだろう。いつかは笑って言うと視線を移した。
すると蜘蛛は抗議するように、ピョンッといつかの手に飛び乗った。
「ひゃあぁぁぁ!」
カサッという小さな虫の足が肌に触れる独特の感触に、いつかは悲鳴をあげた。
「いつか、うるさいわよ。そんなことくらいマミちゃんが知らないわけないでしょ?」
主人はいつかに冷ややかな視線をなげておいて、小さな蜘蛛にニッコリと微笑みかける。
「それでどこの中学だったの、マミちゃん?」
主人は銀色の鋏で素早く髪の先、一センチほどを切ってマミの影に差し出した。蜘蛛の影が主人の手に伸び、髪の精名を食べるとプルルッと身を震わせた。
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