『そして連続暴行事件は起こった』

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「えーっ! じゃあマミちゃん、この事件を知ってるの?」 『最初の事件がおこったとき、現場が近かったのでマミを放ってしばらく張らせていたのです。姿を消したエナンチオマーの足取りはまだ掴めていませんので、念のために』  エナンチオマーの話をすると、右腕が疼いた。影の私は見た目には変わりなく主人の腕を映しているが、失った影の一部は返っていない。右腕だけ空っぽの筒のように精命が薄いのだ。  エナンチオマーが冬矢を狙うだろうということは予測がつくが、白の鏡も狙っているはずだ。私は主人から離れるわけにはいかないのがもどかしくもある。 「マミちゃんは天性のハンターだから、食べ物は現地調達できるのよ。コンビニで買い出ししたオニギリ食べてる二人組の刑事なんかよりも、優秀な調査員なんだから」  主人は現場で犯人を追っている刑事には聞かせられない暴言を得意気にのたまう。 『そうはいっても実のところ、マミは現場の刑事達の会話から情報を得たのですよ、アイラ』と一応補足しておく。
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