『そして連続暴行事件は起こった』

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『黒の鏡はエナンチオマーに奪われてしまいました。紅霧も鏡に奏多を入れることはできません』  ピュリュと奏多の思い出にひたっている主人の耳に私の声が届くのか疑問だが、ピュリュ犯人説をはっきりと否定しておく。  エナンチオマーが黒の鏡を奪って暖炉の上の鏡に逃げ込んだ時、紅霧は鞭を使って攻撃したはずみで、暖炉の上の鏡を割ってしまった。そのため追いかけることができず、一番近い風呂場の鏡に急いで走ったのだが、逃げ去ったエナンチオマーは見つけることができなかった。黒の鏡はエナンチオマーに持ち去られてしまったのだ。  紅霧は強張った顔で一度洋間に戻ってきたが、ピュリュが奏多の影に戻ったのをチラリと確認すると何も言わずに姿を消した。その後は一来の前にも現れていないそうだ。  連続暴行事件がエナンチオマーと関わりがあるかどうか、確かな解答には辿り着かないまま授業開始のチャイムがなり、いつかは走って自分の教室に戻っていった。
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