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一来にマミを付けておいたのは正解だった。アイラといつかには、私が危険を予測していたことを知られると面倒なので言っていなかったが、マミにはしおり糸を残すように命じてあるのだ。
とはいえ、しおり糸は細い。日が落ちればしおり糸を辿るのが難しくなる。
彌羽学園に着くと、すぐにしおり糸の始まりを探す。マミが糸を付けるとすれば、校門からだろう。彌羽学園の門柱は御影石の鏡面仕上げだ。赤茶の四角い柱は姿を映せるほど磨かれつるんとしている。マミの糸もすぐに剥がれ落ちてしまいそうだ。しかしよく見ると柱に掘られたレリーフの凹凸に絡めて張られたしおり糸が見つかった。
ざらついた石にしっかりと張り付いている糸に影の体をからませて、ロープウェイのように全速力で滑っていく。早く、早くと心が急く。
影は「嫌な予感」などというものを感じない。先ほど紅霧に披露した予想はおそらく正解だ。そうだとすれば、一来が危ない。
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