『紅霧は突然に』

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『鉄の錠剤です。すぐに効くわけではありませんが、血を作るのに役立ちます』  一来の口に赤くて丸い粒を押し込む。一来は水で飲み下すと、半分ほど減ったグラスを見つめた。  「一来君、もし体辛かったら、話を聞くのは今じゃなくても……」  「いや、今じゃなきゃ、だめなんだ。なるべく早くしないと」 一来が顔をあげ、ゆるぎない決意を瞳に浮かべて言う。それまで黙って様子を見ていた紅霧が口を開いた。 「一来の言う通りだよ。今や冬矢の影は一来の血でパワーマックスだ。いくら動いても平気なはずさ。何をする気なのか分からないよ」 「でも……」  いつかが心配そうに一来を覗き込む。  「僕ならもう大丈夫だ。ただの手の傷だから」と白いガーゼを貼った手を見せる。  「一度に大量の血を奪っていったってことは、二度目はない。一来の精命(マナ)が尽きるまでに片をつけにくるはずさ」  「いつ、どこで襲われたの? 一来、順番に話して」
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