『紅霧は突然に』

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 『皆さん。冬夜の影とエナンチオマーが一来の精命を奪いに来たのですから、黒いマナはまだ充分には溜まっていないのでしょう。エナンチオマーと冬矢の影は、奏多をいじめていた人物を襲うことで、奏多の復讐をとげ、黒いマナを貯めようとしています。  すでに影に襲われた三人は、奏多に聞いたところによると、彌羽学園の文化祭に来ていた人物です。奏多に連絡を取り、次に襲われるターゲットを特定しましょう』  「いつか、奏多に連絡取れる?」  「うん。スマホで連絡してみるよ」いつかは涙を拭うと、スマートフォンを取り出してまだ震えている指でメッセージを送った。  「休んでいる場合じゃないよな。起きないと」  一来はベッドから降りようとしたが、ふらりと倒れかかった。一来の体を支えベッドに座らせたが、上半身が定まらないように揺れている。どうやらまだ力が入らないようだった。  これでは動き回るのは止めた方がいい……。  『今日はもう時間が遅いですし、エナンチオマーと冬矢の影がターゲットを襲うのは、明日の放課後以降でしょう』
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