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「どうしてエナンチオマーが今日は動かないってわかるの?」
『いつかや浅葱先生の時もそうですが、今回も影たちはリアルの生活を壊さないように動いていましたから。
襲われた三人もすべて襲われたのは放課後から家に帰るまでの時間帯です。これから食事と入浴をして寝ようというような時間に、人間を襲うようなことはしないでしょう』
「そうか……」
『時間があるうちに、何かお腹に入れた方がいいかもしれませんね。』
「食欲なんかないけど……」と、いつかが首をふる。
『いいえ。食べなければ動けませんよ。特に一来は体を回復させるためにも食べなければ。さあ、何かお持ちしますので、皆様、ダイニングに移動してください?』
一来に手を貸してベッドから起こすと、最初こそふらついたものの、歩き出すと次第に足取りもしっかりとしてきた。念のため、一来をダイニングまで送り届け部屋を辞すると、キッチンへ向かう。
さて、何がいいだろう。すぐに出来て、暖まるもの……。
冷蔵庫を開けて食材を確認する。胸の前で腕を組み、顎に手を当てて、メニューを検討していると主人がキッチンに入ってきた。
「フラーミィ、明日は学校が休みだし、みんな泊っていくことになったから、そのつもりで支度をお願い。奏多ももうすぐ着くと思う。ママは仕事で帰りが遅いけど、連絡して了解をもらったから」
「承知いたしました」
ではやはり、夕食はアレにしましょう……。私は一番大きな鍋を調理台の下から取り出した。
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