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ベースは昆布だしなので、漬けたれはゴマダレとポン酢、醤油ベースにラー油を足したピリ辛ダレの三種類を用意した。
「おかわりはご自由にお取りください」
暖かな湯気がたちのぼりテーブルに美味しい空気が満ちる。
「いただきます」
一来がそっと器を持ち上げ、箸をつける。
真っ白だった一来の顔に朱が戻るのを確認してから、私も箸を持ったところで、いつかが「ちょっと待ったあ!」と私の腕を抑えた。
「どうかしましたか、いつか」
いくら私が影であり食事を摂る必要はないにしても、食べる直前に待ったをかけるのは非情ではないか。不快な表情をわずかに浮かべてしまったのは大目に見ていただきたいものだ。
「フラーミィ、お願い! ちびアイラちゃんになって!」
「はぁ?」
不本意ながら間の抜けた声をあげてしまった。思わず手に持った箸を置き、そっとテーブルを見回す。
主人は自分には関係のない話だと判定したらしく、私といつかの方に視線も向けず、ひたすら食べ続けている。一来も食べ始めたら体が栄養を求めているのか、横目でこちらを見て気にはしているものの箸は止まらない。
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