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「ゴメンゴメン」と謝りつつ、それでも満足げに箸を動かし始めたいつかだったが、ふいに何か気が付いたのか、顔を上げて奏多に話しかけた。
「そういえば奏多ちゃん、中学三年生だったよね。受験生なのに、大丈夫だった?」
奏多は背筋を伸ばして、スポーツ選手らしい食欲を発揮していた所だったので、もぐもぐしながら首を縦に振った。
「そうだったわね。彌羽学園は中高一貫だから、気が付かなかった」
主人もめずらしく他人の状況に気を配る発言をする。
紅霧がまだ口の中が食べ物で一杯の奏多に代わって返事をした。
「大丈夫さ。奏多は水泳で関東大会に出場もしている有望な選手だからね、推薦でもう高校進学は決まっているのさ」
「合ってる……けど、なぜ知っているんだ?」
ようやく食べ物を飲み込んだ奏多が、不信そうに目を細めて紅霧を見る。紅霧は奏多の部屋に隠れて住んでいたことを告白する気はないようで、肩をすくめただけで奏多の疑問を聞き流すと「そんなことよりね」と話題を変えた。
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