腹が減っては

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 いつかがアイラに抱きつこうと両腕を伸ばすのを手で払いのけ、主人はムキになって反論する。  「ちがうわよ! あの子達にイラついたからよ」  「はいはいっと」  いつかは満足げな顔で聞き流すと、取り箸を手に取って鍋に手を伸ばした。 「ちょっと、聞きなさいよ」  慌てる主人の様子が面白いので、追い打ちをかけてみる。 『あの時の、アイラの回し蹴りが役に立ったね! 空振りだったけど』と人差し指で空中を指差しながら言う。口にはせずとも、ほらアレ、というように。  「ちょっとフラーミィ、誰が空振りさせたのよっ!」  「なになに? 回し蹴り? そんなことがあったの? 詳しく教えてよ」  その場にいなかった一来が興味を示し、体を乗り出してくる。  「一来までそんなこと言って! 一来だって『助けて~』って泣きべそかいていたじゃない! そうだ。思いだした。帰ってきたらお仕置きするんだったわよねえ」  主人は両手でカニ、カニと指を曲げ、猫目を吊り上げる。ようやく攻撃に転じるきっかけをつかまえたので、主人はまるで舌なめずりでもしそうな顔で一来に詰め寄った。
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