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「エナンチオマーは手強い。”優先順位”を決めよう。
一番は誰も失わないこと。何も成せなかったとしても、それでもいい。無茶はしないことだ。
二番は黒の鏡を取り返すこと。そして冬矢を解放する。そうすればあの怖いおばさんも助けられるって寸法だ。分ったね?」
優先順位……。そういえば、キラルの扉を入る前に、紅霧も同じことを言っていた。もともとは桐子の口癖だったのか、と思い当たる。
「まあ、あのおばさんに助ける価値があるのかどうか、私にはわからないけどね。それじゃあ、エナンチオマーをやっつける、これが三番かい?」
「そうだ。だけどね、エナンチオマーは鏡像だ。ヒューマンではないから、おそらく普通に攻撃しても死なないだろう」
『ではエナンチオマーを倒す方法はないのですか?』
桐子は深い深いため息をついた。そして気遣うような目でちらりと紅霧を見やってから、語りだした。
「入れ替わりの法則について、話したことはまだなかったね。まずはそこからだ」
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