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「白と黒の精命をそれぞれの鏡に満たせばいいんだろう?」
紅霧がなぜ今更わかりきったことを言うのか、というようにいぶかしげに言う。
「紅、その通りだよ。だけどね、精命が満ちれば、自動的に入れ替わるっていうわけじゃないんだ」
『白と黒の鏡を見合わせりゃ、ですね』
「その通り。白と黒の鏡を合わせ鏡にしたら、二枚の鏡の間に人と影が入るんだ。そうすると入れ替わる。だけど影の代わりにエナンチオマーが入ったらどうなると思う?」
「影の代わりにエナンチオマーが本体と入れ替わるのかい?」
「そうなるね。だけど、知っているだろう? もともとエナンチオマーは影を持たない。だから入れ替わっても、ヒューマンの冬矢は影にはなれずに消滅してしまうし、主を失った影も消えてしまうんだ」
紅霧は桐子の話を咀嚼するように、口の中でブツブツと桐子の話を繰り返した。
「つまり入れ替わりがおきたら、エナンチオマーだけがリアル世界に残る。一人勝ちって訳かい? だけど桐子、それだけじゃエナンチオマーの倒し方の説明にはなってないよ」
「エナンチオマーは鏡像だ。だから本体と入れ替わる前に鏡にもどして、鏡を割ってしまえばいいのさ」
「そうか! 黒の鏡にエナンチオマーを入れて割ればいいんだね!」
「正解だよ、紅」
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