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「アイラちゃん、起きて! 寝ている場合じゃないよっ!」
主人の布団を一気にはがし、大音量で耳元で叫ぶ。見事だ。
叩き起こす、というのはこういう行為を指すのだと初めて知った。どのような効果をもたらすのか、主人の逆鱗に触れるという危機的な状況にも関わらず、興味が沸き起こる。
「もー、うるっさいなあ……!」
「黒い精命が溜まっちゃったんだよ! 早く起きてー!」
『いえ、まだ……』
「えっ! 黒い精命が?!」
若干の勘違いをしつつ、叫んだのは主人ではなく、いつかの声で飛び起きた隣の部屋で寝ていた一来だ。続けてベッドから起きだす騒がしい音が続いて聞こえてくる。眼鏡をまだかけていないのか、何かにぶつかる音がし、痛え、と叫ぶ声が続く。
別のベッドに寝ていた奏多も目をこすりながら体を起こす。
「着替えて、玄関に集合ね!」
「"了解!”」
すでにはっきりと目覚めているいつかの指示に、奏多がカニのポーズで答える。
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