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六人は濡れたアスファルトに降り立った。唇を噛みながら、無理して微笑んで手を振るアイラの母に頭を下げるのももどかしく、冬矢の家に向かって走り出した。
道沿いの家はどこもすでに灯りは消え、雨に包まれて眠っている。
寝静まった町の中で、冬矢の家だけはどの部屋にも電気が点き、違和感を放っていた。しかし門をくぐってみれば、訪問者を拒むように、玄関ポーチのライトだけがついていない。
「冬矢の家族構成はわかる?」
玄関のドアレバーに手をかけたまま、主人が奏多に聞く。奏多は申し訳なさそうに首を振った。
「冬矢先輩は姉弟はなし。お父さんは単身赴任中で、お母さんと二人暮らししているはずだ」
一来が奏多の後ろから口を出す。
「じゃあ遠慮することないね」
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