Last Battle

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 主人が輝くブルーアイで私を見る。  「承知いたしました」  無言の指示を受け、胸に白い手袋をした手をあて丁寧にお辞儀すると、影となり隙間から家に入り込む。素早く鍵を開けると玄関を開け放った。  「どうぞお入りください」  主人は玄関に入ると、迷わず靴を脱ぎ捨て上がりこんだ。  おじゃまします、と声をかけることもせず、かといって足音を潜めるでもなく、家の奥にすすんでいく。  言い争うような声が聞こえてくる。フローリングの廊下をすすみ、ガラスのはまったドアをあけると、ダイニングキッチンがあった。  「こんばんは」  主人は冷蔵庫前に立っているモンスターママを見つけて声をかけた。モンスターママの手前には、逃げ口を塞ぐように二人の冬矢が立っている。二人の後ろにはシステムキッチンがあり、スイッチが入っていないIHクッキングヒーターの上に、黒の鏡が伏せて置いてある。  怯えた目で二人の冬矢を見あげていたモンスターママが、キッチンの入り口に立っている侵入者達を見た。  「あんたたちは……」    震える唇が声を絞り出す。  彌羽(みわ)学園で穏やかとは言えない顔合わせをしているため、主人達の顔に見覚えがあったようだ。見知った顔だとしても深夜に息子の学友が、連絡もせず訪ねてくるのは異常事態だ。相手がモンスターママではなくても、本来ならば怒鳴られて追い出されても仕方がないところだ。  しかし今のモンスターママにとっては、双子を産んだ訳でもないのに、同じ顔をした二人の息子に追い詰められている状況の方が、あきらかに受け入れがたいのだろう。ほっとした表情が浮かぶ。
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