『モンスターは突然に』

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 「とにかく、素行の悪い生徒と同じクラスは困るんです。三年生なんですよ。一番大事な時に、場を乱す子が同じっていう……の……は……」  息継ぎもしていないのではないかというほど連続していた演説が、突然途切れ途切れになり始めた。  「です・から、検討とかじゃなくて、今すぐ対っ処してください! それじゃ、今日はこれで」  女性は唐突に話を終わらせると、職員室を飛び出していった。背中に手をまわし、体をひねったりしながら、小走りに走り去る。主人は職員室の中の時計を確認した。  「校門を出るまでは、帰ってきちゃダメって言っておいたから、しばらくはあのままね……」  主人はニンマリとして、私と一来そしていつかを、眉毛を上げて見た。この顔を世間ではドヤ顔というのだろう。  「アイラ……、何をしたの?」一来は顔をしかめ、主人に意見しようと口を開きかけた。  しかし「今はそれどころじゃないでしょ? さあ、中に入ろう!」といつかが遮って、職員室のドアに手をかけた。  「失礼しまーす」  「ああ、なんだい……」  痩せた男性教師が顔をあげた。  「浅葱先生。……顔色が悪いですよ。大丈夫ですか?」  「何が? ああ、いや、もちろん大丈夫だ」     
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