『モンスターは突然に』

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 いつかの質問に大丈夫と答えたものの、椅子に沈み込むように座り額からじっとりと粘るような汗をにじませている顔が、それは強がりだと物語っている。誤魔化すように銀縁の眼鏡をはずし、小さな布で磨いてから、ぎこちなく掛けなおした。  「お茶、淹れてきますね」  いつかは机の上の湯飲みを手に取り、給湯器でお茶を淹れてきた。といっても、ボタンを押すとお茶の粉末が一回分出てくるので、そこにお湯を注ぐだけだ。    「ああ、ありがとう。ダメだなあ……。生徒に気を使わせるなんて……」  肩を落とし、熱い湯のみを両手で挟んでぎゅっとにぎった。  「先生……火傷しちゃいますから……」  握りしめられている湯飲みを、一来がゆっくりと引き抜いて机に置きなおす。浅葱先生への同情で会話が途切れたところで、主人が言った。  「いつか、早く要件を言って」  まるでコンビニエンスストアで「マスカット味のガムありますか?」とでも言っているような口調だ。同情のかけらも感じられない。  「アイラ、ちょっと浅葱先生を休ませてあげろよ」一来が小声で咎めたが、  「大丈夫だ、真堂くん。ええと、それで君たちの用事はなんだい?」と浅葱先生が無理に微笑みながら言った。  そして今度は湯飲みの熱い個所をさけて上の方を持ち、口に運ぶ。一口すするとお茶の熱さのおかげか、顔に少し赤みがさした。
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