『密談はファミレスで』

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 「ねえ、食べる前に教えてよ、アイラ! この子、誰なんだよ?」  『ん! 甘ーい!』  一来の声に、小鳥がさえずるような高音がかぶさった。主人の隣に座った少女は、つるんと光るエナメルの靴を履いた足をパタパタと揺らす。(すそ)にレースの付いたふんわりしたスカートはお人形の服のようで、幼い少女が着るにしても可愛らしすぎるほどだ。しかし絹糸のような光沢の金髪に青い瞳、白い頬の美少女にはとてもよく似合っている。  「あ、日本語、話せるんだ……。あの、君はえーと、お名前は?」  一来がほっとしたように、話しかける。  『アイラ・ウィスハートだよ』  ふっくらとした小さな手に持ったスプーンで、ブルーベリーソルベにスプーンを突き立てるが、まだ固くてスプーンが入らない。ちょっぴりスプーンについたソルベを舐めながら、一来を見つめる。青い大きなつり目は、主人と同じだ。  「えっ、アイラ?」  一来はぎょっとしたように、隣に座ったアイラと見比べる。  幽霊か分身の術でも使ったのかと思っているのか、何度も二人を見比べる様子に、こらえきれなくなったように主人が笑い出した。スプーンを持つ手が震え、パフェの長いグラスがカチャカチャ音をたてる。
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