『密談はファミレスで』

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 『私ですよ、一来』  「えっ? フラーミィなの?」  テーブルの向かい側から手を伸ばして、私の頭を撫でていたいつかが、手をとめて顔を覗き込んできた。「変身できるんだー」と体を乗り出し、顔をさらに近づけてくる。私の面影を探しているのだろうか。  (ソルベが見えないので、顔をどけてほしい)  そう思いつつ、質問に答える。  『いいえ。変身という訳ではありません。影は影自身と本体、つまり私ならアイラにしか姿を現すことはできないのです』  「えっ? でも……」  いつかは頬っぺたをつん、と私の頬を人差し指でつついた。  片方の肩をあげて、いつかの指から逃げる。見た目は少女でも、私は小さな女の子ではないのだ。  『この姿はアイラの幼い時の姿です。過去の記憶で姿を現しているのです』  「そうか、そういえば紅霧も若いときのアイラのお祖母(ばあ)さんの姿だったっけ……」誰に言うでもなく言って、いつかはフォークを手に取り、一人納得している。それから「取り皿もらう?」と主人に聞いた。  「ちょ、ちょっと待ってよ。じゃあこの子はフラーミィで、アイラの小さいときの姿だってこと?」  一来が割って入る。     
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