フラーミィと一緒

6/10
前へ
/311ページ
次へ
 『大丈夫ですか? さあ、行きましょう』私にしがみ付いている一来の腕を軽く叩いて促す。  「あ、ありがと、フラーミィ」  新校舎に近づくにつれ、いよいよ言い争う声がはっきりと聞こえるようになってきた。  暗い廊下は暗闇に二つの人影が浮かび上がっている。  「どうして出来ないんですか! あの素行の悪い生徒を退学に出来ないなら、クラスを変えてくださいよ!」  「そ、そんな、あの子は素行が悪い訳じゃ……」  「クラスが変えられないっていうなら! あの子のせいで勉強に集中出来ないから、うちの子の試験の点数が悪かったんです。指定校推薦までもう少しなんだから、あと三つ、成績を上げてくださいよ!」  「……」  浅葱先生は何か言おうと口を開けたが、眉間に皺をよせ、胃のあたりを手で抑えたまま黙り込んだ。  「聞いているんですかっ?!」  朗々とした声の響きに押され、浅葱先生は一歩、二歩と後ろに下がった。手で抑えた胃を起点にして、体を前屈みに折る。  浅葱先生の上から、ゴミ箱の中身をぶちまけるように、モンスターママは文句のあられを降らせる。    (おや?)     
/311ページ

最初のコメントを投稿しよう!

262人が本棚に入れています
本棚に追加