ツンデレ嬢は他人のために魔法を使わない

ライブ前

　文化祭が近づき、校内に何カ所もある掲示板に、色とりどりのポスターが貼られ出した。
　主人のクラスの教室の後ろには、人間よりも大きなアイスクリームが描かれた段ボールが立てかけられている。アイスクリームショップをする予定なのだ。
　灰色の校舎内がカラフルになっていくごとに、どことなく学校全体が浮き足立ってくる。

　「僕たちもポスター位、作った方がいいんじゃない？」

　掲示板に貼られているポスターを眺めていた一来が、いつかを振り返った。

　「じゃあ、ハイ。これ」

　いつかは腕に下げていた紙袋から、紙の束と画鋲(がびょう)を出して一来に渡した。