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「ん? これって俺たちのポスター?」と一来が思わず受け取った紙の束には、練習中に撮ったバンドのシルエットの写真が印刷されていた。モノクロームの紙面に赤でDeath Clownというバンド名と王冠をモチーフにしたロゴが載っている。
「CrowとClownって……」自分たちのバンド名を初めて聞かされた一来は目を見開いた。「似てる……よね?」
いつかが心酔している火野と府川虎のバンド名はDeath Crowだ。
「似てないよ。カラスと王冠だよ?」
「いや、英語で見ると似てるよね? 本物が来ると勘違いするんじゃない? 僕たちの写真はシルエットだし」
女性のアイラと男性の火野では、間違えようがないようにも思うが、Death Crowのボーカル火野は、細身の体型で長いコートのような服を着ているので、シルエットだけだとロングスカートを履いた女性のように見えることもあるのだ。
「ここに、説明が書いてあるから平気。ほら、Death Crowの曲に乗せてオリジナルの歌詞を歌いますって」
「本当だ……」
「えっ、本物? って思わせて、ポスターを見てくれれば、コピーバンドをやるってわかるでしょ? それで見に来てくれれば万事オッケー。興味を引かないとゴスメタルやりますよ、ってことが認知されないじゃない」
「なるほど……」手に持ったポスターに目を落として、頷いた。
Death Crowは翼を広げた大きなカラスのシルエットがロゴマークの後ろに入る。
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