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主人達のバンドは王冠とDeath Clownという文字を組み合わせたロゴになっていて、雰囲気は似せているものの、全く違う。
「じゃあ貼ってくるよ、って、これ全部? いつかちゃんたちは貼らないの?」
「私達は浅葱先生の所に、当日の音響の相談に行くの」
「いつかちゃんはわかったけど、アイラは関係ないんじゃない? けっこう沢山あるから手分けして貼った方が」
「フラーミィに相談しながら、決めたいのよ。スピーカーの位置とか照明の当て方とか。二人羽織りの状態のフラーミィが見えないように、逆光気味にしたいんだよね。まあ、一来君が一人でドラムを叩けるなら、アイラちゃんにポスター半分貼ってもらうけど」
「わ、わかった、貼ってくる。一人で叩くなんて絶対に無理!」
さらに言い募るいつかから逃げ出すようにして、一来は足を踏み出した。しかし急な方向転換のせいで、両腕の上に何枚も重ねて乗せられていた紙がずれて滑った。慌てて紙を顎で押さえたが、紙の一番上に乗せられていた画鋲の入ったプラスチックケースが落ち、中身が廊下に散らばってしまった。
画鋲は針が細く、手に持つ部分が目立たないように小さいタイプだ。ポスターの雰囲気を邪魔しないのが利点だが、拾うのには適していない。
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