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思いの丈を紙面に載せた。今度はちゃんと、想いを乗せてタクヤの下駄箱に入れようとした。その時、ふと横を見ると、側にはナツキが立っている。手に手紙を持って。
私は慌てて手紙をポケットに隠した。
ナツキのそれが意味することは何となく分かった。
「はは、鉢あったね」
「ごめん、見ないから!すぐ退くよ」
「いい。見てて」
ナツキはそう言って手に持ってた手紙をタクヤの下駄箱に入れた。
「もう5回目なんだ……私」
5回目。私はまた、怖気付いた。
「返事、待ってるんだ」
「まだ?」
「うん、諦めきれなくて」
ナツキが逞しく思えた。
私たちがタクヤの下駄箱前で会ってから一週間経った。
けど、私は未だに手紙を出せないでいた。
いつもの日常が音もなく過ぎていったある日のこと。
私はタクヤと帰りが一緒になった。
「タクヤ、私が何人かの手紙を預かってタクヤに渡してるでしょ?返事はしてるの?」
前から気になっていたことをようやく切り出せた。
「してない。する必要もない」
「なんで!?タクヤがちゃんと返事しないからこっちにとばっちりが来てるんだけど!」
私は怒りを込めてタクヤに言った。
でも、その直後のタクヤの言葉に私は納得した。
「自分で出せない手紙なんだ。そんな奴の手紙なんか、なんの重みもない。出さないのと同じだと思わないか?最後まで責任持てって」
何も言い返す言葉がない。
「でも……じゃあ下駄箱の手紙は?」
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