43人が本棚に入れています
本棚に追加
/124ページ
ランセルおじさんは父バートの隣へ、妻サラはその向かいに座り、バスケットから包みを取り出した。
「召し上がれ、ジュピター」
「ありがとう、サラおばさん」
サラの焼くビスケットパンは、甘くてとても美味しい。僕が大好きだから、サラはこうしてよくパンを焼いてきてくれる。
「そうか、また課税か」
とと様は難しい顔をして、ランセルと話していた。
「ああ、数ヶ月しないうちに、また通達が来るさ」
大人の話はちょっと難しいや。サラの家には子供はいたけど、まだ小さくて、畑仕事には来てなかった。
兄弟がいたらな、って、こんな時に思うんだ。一緒に遊んだりできたら、楽しかっただろうな、って。
「さあ、収穫だ」
とと様の背を見るのが、好きだった。大きな背中によくしがみついた。
僕の毎日は、穏やかに時が過ぎていた。愛を受け育ち、それは当たり前にこれからも続いていくものだと思っていた。
『その時』が、やがて訪れるまでは___
最初のコメントを投稿しよう!