趣味とバイトと白雪くん

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「大丈夫、自信持ちなさい! 貴方さっきとは別人だし、きっと貴方だって誰も思わないわ! この店はお酒なんて置いてないし、高校生も大歓迎だから! それにここはバイト代も高いのよ!」  逃がさないとばかりに僕の手を強い力で握り。強い圧力とマシンガントークで畳み掛けるように捲し立てられた。  ここまで人に必要とされた事は今までない。それに、惹かれない言葉がなかった訳ではなくて。 「バイト代……高いんですか?」 「高いわよ! シフト制だから毎日働けとは言わない! 学生だからテスト期間とかも考慮するわ! 学生なら何かとお金掛かるでしょ? 趣味に使ったりとか」 「趣味に……」  確かにお金は掛かる。アイドルの写真集やCD、雑誌も買うとかなり小遣いだけではきつい。かと言って、一緒に住んでいる兄夫婦に頼むのも躊躇われる。 「あの、それじゃあ……僕で良ければ……」 「本当!? ありがとう! 私、水鳥! みどりさんと呼びなさい! それが源氏名だから! 貴方も決めないとね……名前は?」 「あ、真白悠希です」 「ましろゆき……じゃあ白雪ちゃんはどうかしら! 可愛いわ!」 「しらゆき……」  この店の中での僕の名前は、白雪。  最初はすごく戸惑ったが、初めて自分の居場所が出来たような気がした。その日は親と高校からバイトの許可を貰うように言われて、化粧を落として家へと帰った。  兄さんには反対されそうだったから、しばらくは内緒にする事にして。義理のお姉さんに喫茶店でバイトすると伝えると、喜んで許可してくれた。女装メイド喫茶とは言えなかったけど。  また秘密が増えてしまった……。
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